はかなく美しい少女の肖像画である。
モデルは『ベアトリーチェ・チェンチ』という名前である。
彼女はイタリアの大貴族・フランチェスコ・チェンチの娘である。
父・フランチェスコは暴力的気質を持ち、二人の息子や母をリンチしたり挙げ句には、べアトリーチェを近親相姦したり、教区の裁判官ともめたりと俗にいう超DQNである。
それでも許されてきたのは大貴族の財力と政治力の所以だろう。
父の横暴さに恐怖の日々をおくっていたベアトリーチェと家族だったが、ある日恋人の使用人とともに父に麻薬(毒)を飲ませようとして失敗。
その後、杭と金槌で父を打ち殺した・・。
ベアトリーチェ達は「父は自殺した」と主張するも死体痕から認められず、恋人の使用人ともう一人の使用人が拷問を受ける。恋人の使用人は自白しないまま死んでいったが、もう一人が自白した。
これに対し、時の教皇・クレメンス8世は一切の慈悲をしめさなかった。
これよりチェンチ家の領地・財産は没収され、家族は全員死罪となる。
この肖像画は刑が執行される前にグレド・レーニによって描かれたものである。